西田は、「理(ことわり)とは万物の統一力であって兼ねてまた意識内面の統一力である、理は物や心によって所持せられるのではなく、理が物心を成立せしむるのである」[西田2019]として、意識現象世界の理を述べています。私は、この統一力の背景に「意識現象世界が負のエントロピーを帯びている」と考えます。エントロピーとは、粒子(原子と分子を含む)の「乱雑さの尺度」のことです。そして、すべての粒子は不可逆な断熱過程においてその乱雑さが増えるとされています。このことを正のエントロピーといいます。これに対しシュレーディンガー[シュレーディンガー2020]は、負のエントロピーを唱えました。彼は、「生物体は『負エントロピー』を食べて生きている」と比喩しているように、生物は外界からそれをとり入れることによって体内で増加するエントロピーを相殺すると考えています。そしてその原因が「物質代謝(metabolism)」にあると捉えているのです。つまり、生物は拡散する乱雑さを代謝による発達へと転換しているのです。意識現象も同様です。粒子(ここでは印象や現象)の乱雑さは、実在の性質である矛盾衝突によってやがて統一へと向かうのです。(第2講 統一の描写より抜粋加筆)
理(ことわり)とは?
更新日:6 日前
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