目覚めた際に夢の内容が断片的であったり支離滅裂であったりすることは多いと思います。これに関連して境識倶泯(きょうしきぐみん)という考えがあります。この意味とは、対象(境)も意識(識)も煩悩(俱)とともに滅ぶ(泯)ということです。夢から覚める際に、このことが起きているのです。
ダマシオの仮説[ダマシオ2012]を踏まえて考えてみたいと思います。主観(現象的自己)の形成過程では、絶え間なく派生する中核意識とこれに呼応する中核自己による直観の束となって延長意識が生まれます。さらに、これから派生する自伝的自己によって記憶が顕在化するのです。ただし、睡眠時と覚醒時において派生する延長意識の特性は異なります。睡眠中は、主に超自我の影響を受けます。ところが、その様相は目覚めた途端に変わります。今度は、五感の知覚が主となって直観の束ができるのです。そして、これらに規定された延長意識をもつ自伝的自己が、目覚める前のそれに上書きされてしまいます。これによって前の延長意識の記憶がぼやけてしまうのです。したがって、夢(の内容)とは、最後の自伝的自己がうろ覚えの延長意識をつなげて創った物語と言えましょう。
ちなみに睡眠中の延長意識は主に超自我に規定されるために、その内容は「意識には承認されない個別的な動機であり、日常過ごしていた状況の意味や引き出せなかった結論であり、自らは認めがたい情動、せずにすませてきた批判など」[ユング 2010]となってしまうことが多いのです。(第3講 直観より抜粋)
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